診療科のご案内

網膜復位術の説明

裂孔原性網膜剥離と網膜復位術

眼球内壁には網膜と呼ばれる神経の膜があり、網膜はフイルムの働きをしています。
眼球内部にあるゼリー状の硝子体が網膜を引っ張ることにより網膜に孔(網膜裂孔)が開くと、孔から眼内液が網膜下にまわり網膜をはがします。
この病態を裂孔原性網膜剥離と呼びます。

網膜剥離は最初に視野欠損として自覚しますが、中心部まで達すると急激に視力が低下します。
網膜剥離は自然治癒が望めず、長期間放置すると失明するため手術が必要になります。
網膜復位術は網膜裂孔を眼球の外から凝固し、網膜の下に貯留した液を眼球外へ排出し、眼球にスポンジを巻きつけて硝子体が網膜を引っ張る力を緩めて網膜裂孔を閉鎖します。
スポンジは感染症などの不都合がないかぎり眼球から取り出しません。

術中に眼球の筋肉を引っ張るためにある程度の痛みは感じますが局所麻酔で可能な安全な手術です。
術終了時に眼内にガスを入れた時には術後は下向きなどで安静にする必要があります。

初回の網膜復位術で網膜剥離が完治する可能性は約80~90%です。
術後の復位が不十分なときには再手術あるいは硝子体手術など他の手術をおこなう可能性があります。

硝子体による網膜裂孔の発生 硝子体による網膜裂孔の発生
強膜バックルによる網膜裂孔閉鎖 強膜バックルによる網膜裂孔閉鎖

網膜復位術の合併症

感染性眼内炎

手術の創より病原菌がはいり、眼内感染を起こす可能性があります(約0.1%)。眼内感染がおこった場合、再手術、抗生剤の投与をおこないます。

駆出性出血

眼内の血管が破綻をおこして大出血をおこす稀な合併症です。
すべての眼科手術で起こる可能性があります。

網膜裂孔、網膜剥離

眼内操作や術後の硝子体の収縮により新たな網膜裂孔、剥離が生じる可能があります。
多くの場合再手術を必要とします。

増殖硝子体網膜症

術後、眼内に形成された膜によって網膜剥離が生じる難治性の合併症です。
長期間放置された眼疾患や若年者の術後に起こりやすい傾向があります。

眼圧上昇

術後に眼圧が上昇する合併症です。
ほとんどの場合、経過観察あるいは点眼 剤の使用によって改善します。

眼球運動障害、運動時痛

眼球を動かす筋肉の近傍にスポンジを留置するために術後しばらく眼球運動に影響が出る可能性があります。
ほとんどの例で術後1ヶ月以内に改善します。

術後の充血、異物感

眼の表面に手術による傷が残ります。
数ヶ月で目立たなくなりますが、充血し易くなり、違和感が残ることがあります。

入院期間、安静

術後早期より網膜復位が得られれば1週間以内で退院可能です。
退院直後より家事、外出などは可能です。
仕事の復帰、旅行、運動等については主治医とご相談ください。
術後の点眼薬は一ヶ月間程続ける必要があります。

術後の視力予後

網膜剥離が中心部まで含んでいれば術後にゆがみなどの症状が残り、完全な視力回復が得られないことがあります。
視力は術後半年まで回復が期待できます。