診療科のご案内

緑内障手術の説明

緑内障とは

緑内障とは眼球と脳をつなぐ視神経の障害によって視野が欠損していく進行性の眼疾患です。
眼の固さをあらわす眼圧と病気の進行に密接な関係がありますが、必ずしも高眼圧でなくても発症します。
完全に治療する方法はなく、眼圧を低く抑えることによって病気の進行速度を遅くすることが可能です。

緑内障手術

点眼剤などの治療でも眼圧が下がらず、緑内障の視野障害の進行が認められるときには手術療法を考える必要があります。
手術は大きく2種類に分けられます。
近年は新たな手術器具の開発によって非常に短時間で終わる手術もありますが、どの手術が適しているかは患者様毎の緑内障の状況によるため、適切な手術を適切なタイミングで提案させていただきます。

線維柱帯切開術

眼内の線維柱帯(排水管の様な組織)という組織を切りひろげる手術です。
元々は機能していた排水管が詰まってしまい、その目詰まりを切りひろげることで解消するようなイメージです。
従来は眼外からアプローチする方法でしたが、近年は眼内からアプローチする方法が開発され、手術時間や侵襲が非常に少なくなりました。
切開の際に眼内に出血が混じるため、術後しばらくは見えにくいですが数日で改善することがほとんどです。
他の緑内障手術と比べ、眼圧を下げる程度は決して高くはありませんが、重篤な合併症も少なくいわばローリスク・ローリターンな手術です。
白内障もある患者様の場合、ほとんど手術時間を延ばすことなく同時に手術することが可能です。

線維柱帯切除術

眼の中の水(房水)を白目(結膜)の下まで流れ出ていくようなバイパスを作成する手術です。
ほとんどすべての緑内障の病型に適応があり、緑内障手術として昔から現在に至るまで最も広く標準的に行われている手術です。
眼圧は非常によく下がり緑内障治療として有効ですが、術後眼圧が安定するまでの間に様々なメンテナンスが必要となることが多いです(レーザーによる縫合糸の切糸、結膜の縫合など数分から10分程度で終わるものがほとんどです) 。また、術後数年たってから眼に感染症を発症するリスクもあります(晩期感染症)。前述の線維柱帯切開術と比較するとややハイリスク・ハイリターンの手術ですが、緑内障手術として最も一般的な手術です。

チューブシャント手術

緑内障チューブシャント手術は、前述の濾過手術を行っても眼圧を下げることが難しい、いわゆる“難治性緑内障“の眼に対して行います。
インプラントは、眼内ではなく、結膜(白目)と眼球の間に留置します。眼の中の房水を、眼の中にチューブを留置することで眼の奥に流す手術です。
術後しばらく眼圧は不安定になりますが、時間と共に落ち着きます。
メンテナンスという点では前述の線維柱帯切除術よりも少なく済みますが、眼圧下降効果はやや劣ります。
頻度は少ないですが合併症にはチューブの閉塞、留置しているプレートに被膜が形成される、もしくはプレートが露出される、等あります。

その他

原発閉塞隅角緑内障に対しては、隅角癒着解離術や水晶体再建術(白内障手術)を行います。
患者様毎の緑内障に対し、適切な治療方法を提案できるよう努めます。
何かご不明な点がございましたらいつでも相談にいらしてください。

手術の合併症

駆出性出血

非常に稀ですが眼圧の急激な変動によって眼内の血管が破綻して大出血をこすことがあります。
おきると手術は中止になり失明の危険性があります。

眼内炎

手術の創より病原菌がはいり、眼内感染を起こす可能性があります(約0.1%)。
眼内感染がおこった場合、再手術、抗生剤の投与をおこないます。
感染をおこすと最悪の場合失明してしまう場合もあるため、感染予防のためにも術前、術後の点眼は指示通り行ってください。
特に線維柱帯切除術の術後は長期間の抗生剤点眼が必要です。

高眼圧

手術時の出血、炎症などによってむしろ術後に眼圧があがるときがあります。
眼球マッサージや縫合糸のレーザー切開などの処置を行ったり、あるいは点眼薬、内服薬で経過を見たりする必要があります。

低眼圧、脈絡膜剥離、濾過胞漏出

眼圧が下がりすぎて眼球がひずみ、視力が出にくくなります。
特に線維柱帯切除術の術直後にみられます。
ほとんどの場合が経過観察で改善しますが、眼内の水の漏れなどが結膜より明らかなときには再縫合を行います。

術後の視力低下、視野進行

緑内障手術の目的は長期的な視力の延命効果を狙ったもので、短期的な視力の向上が目的ではありません。
むしろ術後乱視で視力が下がったり、術直後の眼圧上昇で視野欠損が進んだりすることがあります。
特に進行した緑内障では視力低下の危険性が高いと考えられています。

異物感、充血

目立った充血は術後2~3週間でなくなります。
線維柱帯切除術では術後も軽度の充血があり、結膜が盛り上がるために異物感を感じることがあります。

入院期間と術後安静

線維柱帯切除術は術後2週間ほど入院が必要です。
線維柱帯切開術は術後5日ほどで退院可能です。
線維柱帯切除術では術後は強く目をおしたり、こすったり、不潔なものが直接目にはいったりすることはできるだけ避けてください。
術後3週間で仕事、旅行などが可能です。
術後点眼は長期間続ける必要があります。

術後の緑内障点眼薬

手術でも眼圧下降が不十分なときには緑内障の点眼薬や内服約を追加することがあります。
その他不明な点がありましたらいつでも主治医にご質問ください。