診療科のご案内

当院で接種可能なワクチン

当院では下記のワクチン接種を行っています。
外来診療日は毎日実施しておりますが、特に、冬季のインフルエンザの流行があったり、もともと供給が不十分なワクチン(日本脳炎と狂犬病)、さらに、輸入ワクチンでは来院当日の実施が困難な場合があります。
必ず事前にお問合せ下さい。

不活化ワクチン

破傷風ワクチン

0.5mlを0、1ヶ月間隔で2回接種、3回目を6ヶ月-1年後に接種します。
急ぐ場合は2回で抗体価は上昇しますが、破傷風ワクチンは3回接種が原則です。
特に、外傷で医療機関を受診した際、必ず3回の破傷風接種歴を問診されます。
10年毎に追加接種が必要です。

成人用ジフテリア

0.5mlを0、1ヶ月、6ヶ月-1年後に接種します。

DT

破傷風ワクチンとジフテリアの混合ワクチン。
子供用であり、海外にある成人用Tdとは異なります。
追加免疫に用いる際は0.1mlを原則とします。

A型肝炎

0.5mlを0、1ヶ月で2回接種します。
3回目を6ヶ月-1年後に接種します。
2回で抗体価は十分上昇しますが、約1年から1年半で低下してしまいます。
3回目を接種すれば5年以上は有効です。
日本ではまだ小児には適用になっていません。

B型肝炎

0.5mlを0、1ヶ月、6ヶ月の3回接種します。
3回接種後に抗体価は上昇します。
5%の接種者は抗体価が上昇しません。
追加免疫は人により異なります。
3~5年すれば抗体価を測定するのも一つの方法です。

日本脳炎ワクチン

過去の予防接種歴、居住地や年齢を考案してスケジュールをたてます。
但し、成人に対する追加免疫に対し、決まった方法はありません。
初めての人は、初年度2回、翌年度1回の3回を基本にします。
米国では、必要な場合、1ヶ月に3回接種法で行われており有効です。

現行のワクチンは、細胞培養の新ワクチンが承認されるまで、慢性的な供給不足の状態です。

狂犬病

1mlを0、1ヶ月、6ヶ月-1年後に接種します。
その後2年毎に追加接種します。
但し、予防接種をしていても、狂犬病の動物に咬まれた場合は暴露後接種という狂犬病ワクチンによる治療が必要です。
この原則を絶対忘れないようにして下さい。
発展途上国の狂犬病ワクチンは旧タイプ(センプル型動物脳組織由来ワクチン)のものが多く、重篤な副作用が高率に報告されています。
ワクチンが先進国のものでなければ、治療ワクチンと考え、現地での予防ワクチン接種は避けることが賢明です。
1980 年代以後の欧米や日本製ワクチンは安全。
予防投与ももちろん心配がありません。

2006年、フィリピンでの犬咬傷の後に発症した日本人例の後、供給不足の状態です。

肺炎球菌ワクチン
(23価ワクチン)

0.5mlを原則1回のみ接種。
高齢者や免疫不全者が対象。

インフルエンザワクチン

毎年11月から12月に1~2回接種する。
毎年流行するワクチン株が異なるので毎 年接種が必要です。
高齢者や基礎疾患のある人は特に必要です。

生ワクチン -妊婦や免疫不全者は禁忌です-

麻疹ワクチン

0.5mlを1回。抗体価や過去の接種歴で回数は異なります。
米国の学校入学やビザ取得希望者は原則2回必要です。
又、抗体検査で下記のムンプスや風疹の抗体価もない場合、時間節約のため、海外でのMMRの接種も考慮する必要があります。

ムンプスワクチン

0.5mlを1回。

風疹ワクチン

0.5mlを1回。

水痘ワクチン

0.5mlを1回。上記4種のワクチンの必要性は事前の血液検査(抗体価)で調べることができる。
もちろん罹患者は十分な免疫があり、ワクチンは必要ない。
米国では、2回が原則。

MRワクチン

麻疹と風疹の混合ワクチンです。
0.5ml を1回。

輸入ワクチンについて

輸入ワクチンについては、経済産業省並びに厚労省に書類申請し、正式なルートで輸入しております。
どのワクチンも、米国ビザ申請者、留学生の予防接種、更に、途上国への赴任や旅行に際し基本的で重要なワクチンですが、国内には該当するワクチンがありません。
ワクチン製造社はいずれも一流メーカー(Sanofi Pasteur社とGlaxoSmithKline社)であり、いずれのワクチンも、米国のFDA(米国食品医薬品局)や欧州各国の許可のもと、米国並びに欧州で広く使用されている製品です。
但し、わが国では、すべて未承認です。
したがって、国内製造のワクチンとは異なり、重大な副作用を生じた場合は、国内の医薬品副作用被害者救済制度では、対応できないと想定されます。 この点を、十分留意頂き、当院で予防接種を行うか、現地で施行されるかをご判断下さい。
(制度や金額的には、十分ではありませんが、2008年8月1日より、輸入ワクチン副作用被害救済制度が輸入代行業者によって始まったことを付記致します)

輸入ワクチン

腸チフスワクチン
チフス菌Vi多糖体抗原ワクチン
Typhim Vi
(Sanofi Pasteur)

汚染された食品や水を経口摂取することで生じます。
食品取り扱いおよび上下水道処理設備の改善によって、腸チフスの発生は先進国ではまれになりました。
> 但し、ほとんどの開発途上の地域、特にインド亜大陸、中南米およびアジアでの風土病であり、世界中では年間1,300万から1,700万の感染例と約60万人の死者がでていると推測されており、腸チフスは依然として世界的な健康問題である感染症です。
なお本邦には、該当ワクチンはありません。

用量:
1回量(0.5ml)で筋肉内注射。
2歳以上の小児で本剤の安全性と免疫原性が確認されています。
3年毎の再接種が必要。
十分な抗体を得るため、渡航2週間前に予防接種を完了する必要があります。
他のワクチン同様、本剤の接種によって感染を100%予防できない事を銘記し、現地では、食物や水に十分に気をつける必要があります。

副反応:
主な副反応は、破傷風、ジフテリアワクチンと同様、接種部位の局所反応が主であります。
少数、片側性顔面麻痺を伴う偏頭痛や、上腕の神経圧迫等が、報告されていますが、従来のTd(成人用破傷風ジフテリア混合ワクチン、国内には、該当製品なし)と変わりはありません。

成人用百日咳、破傷風、
ジフテリアワクチン(Tdap):
Covaxis(Sanofi Pasteur)

従来子供の感染症と考えられた百日咳ですが、成人への集団感染がしばしば報告されています。
遷延する咳患者の12-30%は百日咳の感染によるとされ、近年各国で問題になっています。
大変感染力の強い細菌で、免疫が十分にないと(過去にワクチンを受けていても抗体価は下がり、不十分になります)、家族内で70-100%、学校内では、50-80%に感染が生じるとされています。
2003年の米国の報告によると、63%の症例は10歳以上の人々に発生しています。
又、これらのグループが、百日咳の犠牲者の幼児の感染源であり、2005年より、米国では、成人の破傷風、ジフテリアの追加ワクチン(Td)の際、Tdapの使用が勧奨されています。
なお本邦には、該当ワクチンはありません。

用量:
1回量(0.5ml)で筋肉内注射。
Covaxisの場合、11歳から65歳の追加免疫に原則使用します。
初回接種者に使用して十分な抗体価が得られるかは、まだ、結論が得られていません。

副反応:
主な副反応は、破傷風、ジフテリアワクチンと同様、接種部位の局所反応が主であります。
少数、片側性顔面麻痺を伴う偏頭痛や、上腕の神経圧迫等が、報告されていますが、従来のTd(成人用破傷風ジフテリア混合ワクチン、国内には、該当製品なし)と変わりはありません。

4価髄膜炎菌ワクチン(MPSV):
Menceva
XACWY(GlaxoSmithKline)

他民族国家である米国では、毎年、1,300-3,500人のNeisseria meningitidisによる髄膜炎が報告されています。
特に、寮で共同生活する新兵や大学高校の新入生では、頻度が、2-8倍であり、髄膜炎ワクチンによる予防が、数年前より、米国留学生対象に勧告され実施されてきました(但し、留学者に対する勧告は、州や学校で異なります)。
髄膜炎は、保菌者の問題もあり、英国含む欧州各国の大学留学生でも同様の問題が生じています。
昨年、CDC IMMIGRATION REQUIREMENTS 2007の改訂で、米国ビザ申請者にも、髄膜炎ワクチン接種が追加になりました。
対象者は、米国ビザ申請者以外、留学生やアフリカ駐在員(アフリカでは髄膜炎菌ベルトと呼ばれる流行地域が存在します)、メッカの巡礼者も対象となります。
なお本邦には、該当ワクチンはありません。
髄膜炎菌の爽膜多糖体抗原には、現在13の血清型があります。
5つの血清型群(A、B、C、YおよびW135)が世界中の髄膜炎菌疾患のほぼすべての症例の原因となっています。
現行のACWYの4価ワクチンでは、有効性は、80%前後と報告されています(主な原因は、B群髄膜炎菌に対してワクチンができないためです)。
但し、アフリカ赴任者やメッカ巡礼者は、A群髄膜炎菌が主であり、高い有効性が期待できます。

用量:
11回量(0.5ml)で皮下注射。
現在、当科では、対象者は、11歳以上としています(小児科では、4歳児から)。
再接種は5年とされていますが、流行地などへの渡航の場合、2-3年後に追加接種が必要の場合もあります。

副反応:
主な副反応は、接種部位の局所反応です。

不活化ポリオワクチン(IPV):
Imovax Polio
(Sanofi Pasteur)

小児麻痺の原因であるポリオウイルスに対するワクチン。
わが国でも、1960年には、5,606名の患者が発生しました。
WHO(世界保健機関)の努力により、現在、世界上では、あと16ヶ国が、未だポリオ常在国です。
ポリオは小児の基本的な予防接種ですが、世界的には、3回以上の国がほとんどです(米国は4回接種が必要です)が、日本では2回だけです。 わが国では、一部に抗体保有率が不十分であることが報告されております。
米国への留学生やビザ希望者の他、長期間の途上国赴任者(特に、アフリカ、インド、アフガニスタン、パキスタン、東南アジア)で、基礎免疫が終了していても、1回のOPVの経口接種(保健所で実施。
春や秋のみ実施の地区も多い。
生ワクチンであり、服用すると他のワクチンが1ヶ月間接種できなくなる)や注射用IPVの1回接種の追加が必要になると考えられます。
PVは不活化ワクチンであり、1週間の間隔を空ければ、別の必要なワクチンを接種できます。
更に、大変頻度が少ないですが、OPVワクチンで問題にされるワクチン関連性麻痺(VAPP)や糞便中へのワクチン株の排泄はなく、極めて安全なワクチンです。
現在、先進国で、ポリオワクチンでOPVのみを採用しているのは、日本のみであり、他の先進国はIVPです。

用量:
1回量(0.5ml)で皮下注射。始めての接種者の場合、IPVでは、2回接種(4-8週間隔)により95%以上、3回接種(6-12ヶ月空けて接種)により99-100%に、3種のポリオウイルスに対する抗体の陽転がみられます。
免疫はおそらく一生持続すると考えられています。

副反応:
主な副反応は、接種部位の局所反応であり、重大なものはありません。

MMRワクチン:
Priorix
(GlaxoSmithKline)

麻疹、ムンプス、風疹の混合ワクチンであり、小児の基本的ワクチンです。
昨今の日本の麻疹のアウトブレイクは、先進国の一員であるわが国としては、大変はずかしい事態です(金や技術があるのに、ワクチンで予防できる麻疹を制圧できない日本は、西洋の常職からは、理解されない国であるとの認織です)。
特に、1989年より、MMRの2回法を実施している米国では、人口が2億9千万人、移民国家でありながら、1年の麻疹患者数は、100人以下であり、麻疹を診療したことがない医師が多いとされていますも又、CDCの統計によると、1996-2001年の間の米国で発生した麻疹で、最多輸出国は日本であり、大変不名誉であることも忘れてはなりません。
MMRワクチンは、米国では、1974年に開発され、30年以上の使用経験があります。
日本でも、1989年から1993年まで、使用されましたが、ワクチン接種後の無菌性髄膜炎の頻度が高く(当初、10万件に1例と報告されていましたが、最終的に、600-800件に1例とされました。但し、副作用の診断基準の暖昧さの問題や、外国ワクチンに比べ、なぜ日本製のワクチンのみが、高頻度の副作用報告があったのか完全には解明されていません)、使用中止の決定になりました。
米国では、むしろ、ワクチン接種と自閉症の関連が話題になりましたが、2001年、CDCよりの見解によれば、因果関係はなく、MMR2回法が死守されている。
現在(2003年)、MMRを3回接種する国は4カ国、2回接種が、43カ国、1回接種が、8カ国です。
ようやく、日本では、2005年から、国産の麻疹と風疹の混合ワクチンの使用が可能になりましたが、MMRの再開には至っていません。

用量:
小児の基本ワクチンであり、12-15ケ月と小学校入学前の2回が標準法です。
1回0.5mlの皮下接種。
生ワクチンであり、妊婦や免疫不全者(例えば、HIV感染者)は接種できません。

A型肝炎ワクチン:
Havrix
1440(GlaxoSmithKline)

国産のA型肝炎ワクチン(通常は3回接種する)もありますが、海外で主流の2回法のワクチンです。
標準的な接種は、2回目が6-12ヶ月後になります。
1回の投与で2週間後に約90%の抗体を獲得、1ヶ月で95-99%と報告されています。
2回接種で100%抗体を獲得します。従って、出発2週間前には、1回目の予防接種を完了する必要があります。
出張が急に決まり、渡航ワクチンのために十分準備期間がない対象者や、1回目の接種を外国で済ませたワクチン既接種者が良い適応になります。
A型肝炎の予防接種については、国産のワクチンを原則としますが、上記条件の該当者は、担当医と相談して適応を決めて下さい。