テッペーザ®による治療について
テッペーザ®を投与される患者さんへ(患者さん向け 製品サイト)
神戸海星病院の取り組み
2024年11月18日
眼科部長・アイセンター長 安積 淳
新薬 来たる!
2024 年12月から、テッペーザ®が活動性のある甲状腺眼症(バセドウ病眼症)に対して日本でも使用可能になります。
米国では2020年から甲状腺眼症による眼球突出に対して使用され、高い有効性の報告が相次いでおり、日本でもバセドウ病眼症に苦しむ方への福音となることが期待されています。
これまでの治療と比べて
従来、活動性のあるバセドウ病眼症は、大量のグルココルチコイド(副腎皮質ステロイド)を点滴、内服、注射して治療するの一般的でした。
グルココルチコイドは炎症・免疫反応を抑え込む強力な薬剤ですが、同時に数多の副作用を引き起こすので、その副作用管理がとても大変です。
また、点滴治療となると 1 か月近い入院治療で、大きな患者負担を強いることになります。
テッペーザ®は「3週間に1回の点滴を8回行う」を標準レシピとする薬剤で、治療に要する時間が短く、グルココルチコイドのように“ありとあらゆる副作用”を心配する必要はありません。
テッペーザ®の抱える問題
とはいえ、この新薬にはグルココルチコイドとは違う問題点も存在します。医学的には、聴覚障害、糖尿病、点滴の際のインフュージョンリアクションの3つが、まず大きな問題として指摘されています。
そのうち聴覚障害と糖尿病は、この薬剤の持つ薬理作用(インシュリン様成長因子1の機能抑制)が原因と考えられています。
神戸海星病院での取り組み:新薬開始にあたって
1)基本姿勢
上にあげた問題点は眼科単独で解決できる問題ではありません。病院として診療科や診療設備をまたいだ連携体制を整え、治療にあたります。
2)個々の問題に対する取り組み
【聴覚障害への対応】
聴覚障害の出現頻度は 10%とされています。薬剤情報には重篤な聴力障害を引き起こす懸念が示されており、神戸海星病院では、慎重な態度で副作用管理に努めます。
具体的には、治療開始前検査として聴力検査を受けていただき、耳鼻科外来(土曜日)で耳鼻科的な問題の有無を事前にご評価いただきます。
問題がない場合も、基本的に 8 回の治療ごとに聴力検査を耳鼻科医師に確認頂く予定です。
耳鼻科医師から聴覚障害の発生を指摘される場合は、耳鼻科再診をお願いし、状況によって治療休止を相談させて頂きます。
【糖尿病への対応】
インシュリン様成長因子を阻害する薬剤なので、“血糖値の上昇”が起こる事は容易に想定できます。
従って、治療開始前の糖尿病評価は必須で、すでに糖尿病で治療を受けておられる方は、かかりつけ内科医先生との連携のもと、血糖コントロール慎重管理をお願いします。
治療開始前に糖尿病がない方も、治療ごとに採血は行い、血糖値の乱れがないことを確認します。
(また、治療開始後に血糖異常が発生する方は、当院内科医との併診を考えております。)
【点滴治療にかかわる副作用への対応】
今日、抗癌剤や生物学的製剤を点滴で投与する、という治療法が様々な診療科で行われています。
この際、点滴中あるいは点滴直後に体調不良がおこることがあり、インフュージョンリアクションと呼ばれます。
ショック症状のような重篤な副作用の際には、薬剤投薬の中止およびショック症状への対応が不可欠です。
神戸海星病院は、外来での抗癌剤・生物学的製剤を点滴投与する施設を以前から稼働させており、こうした外来点滴治療施設を用いてテッペーザ®の投与を行います。
なお、薬剤投与初期はインフュージョンリアクションの危険性が最も高く、副作用発生時の内科医師の対応など、1回目、2回目の投薬は入院での治療(1泊2日)が望ましいと考えております。
治療を入院で行うか外来で行うか、最終的には相談のうえ決定させて頂きます。
より良いバセドウ病眼症治療を目指して
今回、新薬テッペーザ®による治療を開始するにあたり、海星病院から第1回目の情報提示をさせて頂きました。
その他の副作用や医療費用など、まだ多くの情報を提供させて頂く必要があると考えており、今後暫く、この新しい治療に関する情報を適宜ご提供させて頂く予定です。